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目的

近現代はスラムの時代です。スラムとは劣悪な居住環境下で生活せざるを得ない都市貧困層の居住地をさします。先進国のスラムは産業革命期に発生し、近代の計画論の礎を築きました。しかし近代の計画論では地球規模で進行するスラム化現象には対応できません。この限界を克服する理論と実践こそが次世代の計画論を切り開くと考えています。

そこで管理人は、建築学と人類学の方法論を統合し、家屋を通じた異文化理解を試みる建築人類学のフィールドワークをもちいて、以下の研究と実践に取り組みます。研究では、タイ最大のスラムと称されるクロントゥーイの居住空間の構成原理を解明する道義的建築論を確立します。あわせて理論を社会実装したクロントゥーイの居住環境改善のための建築実践にも着手します。この調査研究と建築実践をつうじて、世界のスラム居住者10億人に向けた、居住空間の計画論を確立することをめざします。

フィールドワーク / 建築人類学 / 家屋 / スラム / 道義的建築

テーマ

現時点では以下のテーマに取りくんでいます。

居住環境の形成メカニズムの解明

クロントゥーイでは、多様な背景をもつ人々が共生する中で、 汎民族的・汎文化的な価値観や慣習が培われたと考えられます。 私はこの非言語的な価値観・センス・評価の仕方を「道義性」とよびます。 これまでの研究では、❶住民間で許容された違法増築、➋精霊信仰の禁忌の改変と連動した家屋の増改築から、 彼/彼女らの道義性に支えられた居住環境の特性をしめした。 今後は、家屋と住まい手のライフヒストリーの微視的把握をつうじて、道義性に支えられた居住空間の形成メカニズムを探求します。

居住環境上の脆弱性を乗り越える居住環境のデザイン手法の開発

実践者のひとりとしてフィールドに関与し、現地社会のより望ましい居住環境を住民と協働した建築デザイン実践から実現します。 最終的に、建築学の知識と住民から学んだ実践知を統合した、空間デザイン手法の開発へと結びつけます。 これまでの研究では、温熱環境・通風を改善する住宅の増改築モデルの開発・建設プロジェクトに取りくみました。 今後は、クロントゥーイで現在進行している全住民の立ち退き問題に関与し、住民にとって望ましい再定住のあり方を彼/彼女らとともに考えていきます。

建築フィールドワークの方法論の整備

建築フィールドワークは、①都市・村落と家屋の物的環境の実測、②人々のナラティブを収集するインタビュー、 ③居住環境を改変する建築デザイン実践からなります。 今後は、①②にくわえ、③を核とした居住環境と住まい手のリアリティをより深く理解する方法論を考えます。 ここでは、実践プロジェクトが紆余曲折しながら進行していくプロセスを、人・モノ・言葉・場所などの相互作用から記録します。 これにより、ⓐ建築デザイン実践が現地社会に与えるインパクト、ⓑ私−住民の価値観の乖離、 ⓒ居住環境が今ここで改変する動態性、ⓓブラックボックス化された建築フィールドワークのプロセス、があきらかとなります。 このアプローチをクロントゥーイでの実践をつうじて整備します。

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